ものづくり補助金2020

こちらの記事は2020年のものづくり補助金のまとめです。
最新情報は、こちらのページ(「ものづくり補助金の申請支援」)をご覧ください。

2020年(令和2年)ものづくり補助金とは?

【速報】
ものづくり補助金総合サイトにて「一般型」および「ビジネルモデル構築型」の2次締め切り公募が開始されました。

この情報に基づいて、令和元年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」(ものづくり補助金)の概要についてご説明いたします。
なお、「グローバル型」の公募要領は現時点(2020/4/29)ではまだ公開されていません。

2次締め切りにおける変更点は?

コロナウイルスの感染拡大を考慮して、特別枠が設けられました。特別枠は、補助率が3分の2に引き上げられるほか、審査時に加点措置が受けられます。
補助対象経費の6分の1以上が以下の要件に該当する場合は、特別枠での応募が可能となります。

A:サプライチェーンの毀損への対応 顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと
(例:部品が調達困難になったため部品を内製化、出荷先の営業停止に伴って新規顧客を開拓等)

B:非対面型ビジネスモデルへの転換 非対面・遠隔でサービスを提供するビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと
(例:店舗販売からEC販売へのシフト、VR・オンラインによるサービス提供等)

C:テレワーク環境の整備 従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること
(例:WEB会議システム等を含むシンクライアントシステムの導入等)
引用元: 2次締切分公募要領

これまでのものづくり補助金との変更点は?

公募要領に次のように主な変更点が記載されています。

  • 申請要件に、賃金引上げにかかる計画策定等を追加し、要件が未達の場合に、補助金の一部返還を求めます。
  • 申請手続き簡素化のため、認定経営革新等支援機関の確認書添付を不要としました。
  • 初めて補助金申請される方でも採択されやすくなるよう、過去3年以内に類似の補助金(ものづくり・商業・サービス補助金)の交付決定を受けた事業者は、審査にて減点措置を講じます。
  • 中古設備や専門家活用にかかる補助対象経費を明確化しました。
  • 過去の申請実績を踏まえて、共同申請や設備投資を伴わない事業類型を廃止しました。

引用元: 一次締切分公募要領

賃金引き上げが実現されないときに補助金を一部返納しなければならないことはすでに明らかになっていましたが、認定支援期間の確認書が不要になったことは大きな変更ですね。

中小企業生産性革命推進事業とは何か?

令和元年度補正予算及び令和2年度当初予算案で実施される補助事業です。
この国家予算から、いわゆる、ものづくり補助金、持続化補助金、IT導入補助金が支出されます。

中小企業・小規模事業者は、人手不足等の構造変化に加え、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など複数年度にわたり相次ぐ制度変更に対応することが必要です。
このため、中小企業基盤整備機構が中小企業等の生産性向上を継続的に支援し、中小企業等の制度変更への対応や生産性向上の取組状況に応じて、設備投資、IT導入、販路開拓等の支援を一体的かつ機動的に実施します。

引用元: 中小企業庁のホームページ

補助上限と補助率

2020年(令和2年)のものづくり補助金は、3つの応募枠に分かれています。
それぞれの補助上限は以下のとおりです。
1. 一般型:補助上限額 1,000万円
2. グローバル型:補助上限額 3,000万円
3. ビジネスモデル構築型:補助上限額 1億円

なお、「一般型」と「グローバル型」の補助率は2分の1です。
ただし小規模事業者は3分の2となります。
これまでのように経営革新計画の認定を受けることで補助率はアップしませんので注意が必要です。
一方、ビジネスモデル構築型の補助率は、補助金額が大きいこともあり定額補助となっています。

小規模事業者の定義について

小規模事業者は、公募要領において次のように記載されています。

小規模企業者・小規模事業者は、常勤従業員数が、製造業その他業種・宿泊業・娯楽業では20人以下、卸
売業・小売業・サービス業では5人以下の会社又は個人事業主を言います。なお、交付決定後に小規模企業者・ 小規模事業者の定義からはずれた場合は、補助率が変更となる場合があります。確定検査において労働者名簿等 を確認しますので、人数の変更があった場合は補助率が2/3から1/2への計画変更となります。特定非営利 活動法人は、従業員が20人以下の場合、補助率が2/3になります。
引用元: 一次締切分公募要領

従業員数に会社役員を含めるかどうか、気になるところです。
中小企業庁のホームページでは、会社役員は「中小企業基本法上の常時使用する従業員には該当しない」と記載されているため、会社役員は含めないと考えてよいでしょう。
応募を検討している方で従業員数がギリギリのラインの方は、念のため、ものづくり補助金事務局に確認することをお勧めいたします。

また、会社役員及び個人事業主は予め解雇の予告を必要とする者に該当しないので、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」には該当しないと解されます。
引用元: 中小企業庁のHP(FAQ「中小企業の定義について」)

新設の応募枠について

今回、グローバル型とビジネスモデル構築型が新たに応募枠として設定されました。
グローバル型は、海外事業(海外拠点での活動を含む)の拡大・強化等を目的とした設備投資が対象となります。

ビジネスモデル構築型は、中小企業30者以上のビジネスモデル構築・事業計画策定のための面的支援プログラムを行う場合が対象となります。
例として、デジタル化支援、デジタルキャンプ、ロボット導入FSが挙げられています。

いつから募集がはじまるか?

さて、ではどれくらいの方が採択されるのかが気になるところです。
上述の資料をみると「令和5年度末を最長として」約3万件の採択予定となっています。

2020年のものづくり補助金は、前年度、前年度が約1万件の採択でした。
「ものづくり補助金の過去採択結果リスト」をご参考ください。)

5年間で3万件が採択されるということは、年間6千件が採択予定ということになります。
これまでと比較すると大幅に減少します。
しかも、グローバル型やビジネスモデル構築型は1件あたりの補助額が大きいため、
実質的に採択率が低くなる=採択のハードルが上がってしまうかもしれません。

ただし、「令和5年度末を最長として」ということですから、
早めに補助金の予算を使い切ることにはなるが、採択率はこれまでどおりというシナリオも十分に考えられます。

ではいつから募集がはじまるでしょうか?
第1次締切は、令和2年3月31日(火)です。

1次締切後も申請受付を継続し、令和2年度内には、令和2年5月(2次)、8月(3次)、11月(4次)、令和3年2月(5次)に締切を設け、それまでに申請のあった分を審査し、随時、採択発表を行います。
引用元: 一次締切分公募要領

申請方法(Jグランツとは?)

前回の公募は電子申請のみの受付でした。
2020年のものづくり補助金は、「補助金電子申請システム(Jグランツ)」を用いて申請を行うことになります。

システムを利用するためには、あらかじめ印鑑証明書などを郵送しアカウントを開設する必要があります。
開設審査に2週間程度を要しますので、事前に準備しておくとよいでしょう。
補助金電子申請システム(Jグランツ)のアカウント開設はこちらから。
2020年3月26日にものづくり補助金総合サイトがオープンしました。
こちらに公募要領、スケジュール、Q&A、電子申請システムへのリンクが記載されています。

加点要件と減点要件

加点要件は、次の4つです。最大4つの項目で加点を受けられます。
(各項目はいずれか1つを満たせばOK)

1. 経営革新計画の承認(申請中を含む)
2. 小規模事業者
2. 創業・第二創業後5年以内
3. 昨年の激甚災害指定地域の被災事業者
3. 事業継続力強化計画の認定(申請中を含む)
4. 給与支給総額を年率平均2%又は3%以上増加させる計画を有し、従業員に表明している企業
4. 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円又は+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している企業
4. 被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業・小規模事業者等が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合

引用元: 中小企業基盤整備機構HP(令和元年度補正予算「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」)

これまで加点要件であった先端設備導入計画、経営力向上計画は加点要件から除外されました。

それぞれの計画の概要については以下の投稿をご参考ください。
経営革新計画:「経営革新計画のメリットとは?」
事業継続力強化計画:「事業継続力強化計画とは?」

また、過去3年間にものづくり補助金を受けた方に対しては、減点措置がなされます。
具体的には次の補助金です。
・平成28年度補正革新的ものづくり・商業・サービス開発支援事業
・平成29年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業
・平成30年度2次補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業
・令和元年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業

重要な点としては、今回新たに補助金返還のペナルティが設けられたことです。
つまり、加点要件として申請した内容を、きちんと実行したかを確認され、
達成できていない場合には補助金を返還しなければならない場合があるのです。
たとえば
・賃金引上げ計画を従業員に表明していなかった
・給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標を達成できなかった
・事業場内最低賃金の増加目標が達成できていなかった
などです。

以上、2020年ものづくり補助金についての概要をご説明いたしました。

以下は、はじめてものづくり補助金の応募を検討されている方向けのご案内となります。

はじめて応募を検討している方向け

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金は、革新的サービス開発や、試作品開発や、
生産プロセスの改善を行うための設備投資に対して、国が経費の一部を補助するものです。

補助対象としては、主に機械装置、情報システムの導入などの経費です。
社内の人件費は対象となりません。

採択審査があり、応募者の大体4割程度が採択されます。
審査にあたっては、技術面、事業化面、政策面、加点項目、
という4つの視点から審査されます。
詳しくは「採択される「ものづくり補助金」事業計画書の作成方法」をご確認ください。

また、採択後、すぐにお金が振り込まれるのではなく、
申請した計画どおりに設備導入などを行い、経費を支出したのちに報告書を提出し、
不備がなければ入金されるという流れになります。

圧縮記帳について

入金された金額は、会社の収益となります。
たくさん税金がかかってしまうのでは!?と心配になるかもしれません。
確かにそれでは補助金の意味がありませんね。

そこで国は「圧縮記帳」という制度を設けています。
詳しくはこちらの記事ものづくり補助金など補助金・助成金への課税を避ける方法「圧縮記帳」について知っていますか?をご覧ください。

収益納付について

入金されて終わりというわけではありません。
以後、5年間は事業化の状況を報告しなければなりません。
また、事業化の状況により収益が得られたと認められた場合、補助金額を上限として収益納付をしなければならない場合があります。
なお、会社全体の決算が赤字の場合は免除されます。

認定支援機関とは?

ものづくり補助金の応募に際しては、認定支援機関(正式名称:認定経営革新等支援機関)から、事業計画に対しての実効性を確認する書類を発行してもらう必要があります。

認定支援機関は、中小企業に対しての専門性の高い支援を提供する金融機関、税理士、中小企業診断士などの専門家です。
中小企業庁のページで支援機関の一覧を確認することができます。

申請代行業者について

中小企業診断士のほか、公認会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士など、さまざまな専門家が書類(事業計画)作成を支援しています。

筆者の個人的な考えですが、中小企業の事業計画策定を専門としているプロフェッショナルは中小企業診断士であると考えます。

事業計画策定においては、技術面に加えて、販売・マーケティングなどについての知見が求められるからです。
税務会計、人事労務、許認可申請といった特定領域の専門家ではなく、経営全般に関する知識を有する専門家が望ましいといえます。

中小ものづくり高度化法の12分野の技術との関連性

ものづくり補助金の応募申請区分としては、
・ものづくり
・サービス
2つの区分があります。

わが国の製造業の国際競争力を高めるため、国は「ものづくり高度化法」を定めて
特定のものづくり基盤技術を指定し支援を行なっています。
ものづくり補助金も支援のうちの1つといえます。

よって、ものづくりの区分で応募する場合は、「ものづくり高度化法の12分野の技術」と、どのように関連性があるかを示す必要があります。

12分野の技術(「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」)はこちらから確認できます。

中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン

一方、サービスの区分で応募する場合は、「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を示す必要があります。
こちらは経済産業省が日本のサービス業を支援するために定めたガイドラインです。

このガイドラインに沿って新たなサービスを開発することによって、日本の経済産業を元気にしていこうという考えです。
大きく「付加価値の向上」「効率の向上」という2つの要素に分解して、取り組みの指針を示しています。
2020年のものづくり補助金も「生産性向上促進」のために実施されています。

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」はこちらから確認できます。

ものづくり補助金の審査はどのように行われるか?

ものづくり補助金の審査がどのように行われているか、ご存知ですか?

審査過程は公開されていないため正確なところはわかりませんが、中小企業診断士など何名かの審査員が、応募書類である事業計画書を読んで、点数を付けるといわれています。

その合計得点が高い企業の順から採択されていきます。そして、採択企業の補助金額合計が予算額に達したとき、残った企業は残念ながら不採択となってしまうわけです。

ここで想像してみてください。あなたが審査員の1人だとして、10社、20社と得点を付けていくとしたら・・・どんな企業に高得点を与えるでしょうか?

やはり、他の企業が持っていないような技術開発、あるいは市場ニーズが高くて売れる見込みが高いサービスに高得点を与えるのではないでしょうか。

あなたがこれから作成したい(あるいはすでに作成した)事業計画の内容は、審査員が高得点を与えそうな内容になっているでしょうか?

「高得点」を獲得することができる事業計画とは?

それでは、どのような事業計画であれば「高得点」を獲得することができるのでしょうか。

審査員は、ある客観的な基準に沿って得点を付けていきます。
それは、公募要領に記されている次の4つの「審査項目」です。

  • 技術面
  • 事業化面
  • 政策面
  • 加点項目

採択される事業計画書を作成するためには、4つの「審査項目」にアピールする事業計画書を作成しなければなりません。

それでは、公募要領に記されている「審査項目」にしたがって、見ていきましょう。

技術面

  1. 新製品・新技術・新サービス(既存技術の転用や隠れた価値の発掘(設計・デザイン、アイディアの活用等を含む)の革新的な開発となっているか。
  2. サービス・試作品等の開発における課題が明確になっているとともに、補助事業の目標に対する達成度の考え方を明確に設定しているか。
  3. 課題の解決方法が明確かつ妥当であり、優位性が見込まれるか。
  4. 補助事業実施のための体制及び技術的能力が備わっているか。

引用元: 平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の2次公募要領

技術面においては、革新的、すなわち既存市場にないような新たな製品・サービス開発を行う場合、高い得点が期待できるでしょう。

同時に、これまで市場にないような製品を開発するわけですから、審査員は当然「本当に開発できるの?」という疑いを持つはずです。そのような疑問を晴らすために、開発の課題を明らかにするとともに、どのように課題を解決していくかを具体的に示す必要があります。
自社がこれまで蓄積してきた技術や、人員資源が備わっていることを明らかにしなければなりません。

事業化面

  1. 事業実施のための体制(人材、事務処理能力等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。
  2. 事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。
  3. 補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法及びスケジュールが妥当か。
  4. 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して想定される売上・収益の規模、その実現性等)が高いか

引用元: 平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の2次公募要領

事業化面においては、より売上・収益の規模が大きい計画であればあるほど、高得点が期待できます。

とはいえ、技術面の審査と同様に、審査員は当然「本当に売れるの?」という疑いを持つことになります。

そのような疑問を晴らすためには、適切な市場の選定と、市場ターゲットへのマーケティング方法を具体的に示す必要があります。

提出する財務諸表も審査の対象になります。売上・利益の実績や、資金力が不足していると、当然「本当に売れるの?」という疑問を持たれてしまうことになります。

政策面

  1. 厳しい内外環境の中にあって新たな活路を見いだす企業として、他の企業のモデルとなるとともに、国の方針(「経済の好循環実現に向けた政労使の取組について」において示された賃金上昇に資する取組みであるか等)と整合性を持ち、地域経済と雇用の支援につながることが期待できる計画であるか。
  2. 金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
  3. 中小企業・小規模事業者の競争力強化につながる経営資源の蓄積(例えば、生産設備の改修・増強による能力強化)につながるものであるか。

引用元: 平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の2次公募要領

そもそもマクロ経済的な観点から考えると、「ものづくり補助金」を実施する意図は、経済産業省(中小企業庁)が中小企業に補助金を支出することによって、わが国の経済成長や安定化を実現したい、ということにあります。

政策面では、政策の意図に沿った事業計画が、高得点を期待できます。

たとえば、設備投資、新たな市場の創出、雇用の促進、海外展開などの取り組みなどが考えられます。

加点項目

また、2020年ものづくり補助金の加点要件に該当する場合は、加点が期待できます。
ぜひ経営革新計画に取り組んでみましょう。

まとめ

このように、採択される「ものづくり補助金」の事業計画書を作成するためには、公募要領に記されている「審査項目」にアピールする計画書を作成しなければなりません。
ぜひ上記の点をチェックしつつ、高得点を獲得し採択される事業計画を作成してください。