労働生産性


「経営力向上計画」を作成する際には、労働生産性の経営分析指標を活用することが求められます。
そこで「経営力向上計画」作成に役立つ経営指標として、今回は「労働生産性」について解説します。
労働生産性とは、労働投入量1単位で生み出される付加価値を表す指標で、値が大きいほど好ましいと判断します。具体的には、次のように計算します。

$$労働生産性 =\frac{付加価値}{労働投入量}×100$$
$$=\frac{営業利益+人件費+減価償却費}{労働投入量}×100$$
労働投入量とは、「労働者数」または「労働者数×一人当たり年間就業時間」のどちらかを用います。そのため、計算値の単位は、円/人または円/時間 となります。

目次

  • 付加価値とは?
  • たくさん働けば付加価値は増えますが…
  • 就業時間で計算するほうが対等に比較できる

付加価値とは?

付加価値とは、企業が顧客に対する商品やサービスの提供によって新たに生み出した価値をいいます。くだけて言うと、売上高からその仕入高などを差し引いた粗利(売上総利益)に相当する金額が付加価値です。
付加価値を計算する方法にはいくつかあるのですが、ここでは
付加価値=営業利益+人件費+減価償却費
として計算します。この付加価値は、色々なものに配分されます。図解したほうがわかりやすいと思うので、下をご覧ください。
付加価値
たとえば、売上高が100万円のとき、仕入高等が30万円だと付加価値は70万円になります。この図では、付加価値70万円が、営業利益30万円、人件費30万円、減価償却費10万円に配分されています。さらに、営業利益は支払利息や税金、配当金などの支払いに充てられます。
つまり、企業が生み出した付加価値は、下記の様々な利害関係者に配分されるのです。
人件費→労働者
減価償却費→固定資産
支払利息→金融機関
税金→国・地方公共団体
配当金→株主
したがって、利害関係者すべてが満足するためには、付加価値を高めることが必要になります。

たくさん働けば付加価値は増えますが…

そうすると、何百人・何千人という労働者を抱える大企業のほうが、売上高が大きいので、付加価値も当然大きくなります。同様に、営業時間が8時間で土日休みの個人商店よりも、24時間営業のコンビニの方が売上高は大きくなり、付加価値も大きいでしょう。
でもそれでは、企業の価値を正しく測定できません。そこで、労働投入量1単位当たりの付加価値、つまり労働生産性を計算することが大切になってきます。では、次の数値例を使って考えてみましょう。

個人商店 コンビニ
営業利益 600万円 3,000万円
人件費 800万円 6,000万円
減価償却費 400万円 1,000万円
 付加価値 1,800万円 10,000万円
 労働者数 2人 20人
 労働生産性 900万円/人 500万円/人

付加価値を比べると、コンビニのほうが圧倒的に大きいですね。しかし、労働者数もコンビニのほうが多いため、労働生産性で考えると、個人商店のほうが2倍近く大きくなっています。したがって、労働者一人当たりの付加価値は個人商店のほうが大きく、効率的に付加価値を生み出していることがわかります。

就業時間で計算するほうが対等に比較できる

しかし、個人商店の労働者は二人とも正社員で、コンビニの労働者はパート・アルバイトが大半だとしたら、一人当たり年間就業時間は、コンビニのほうが少なくなるでしょう。労働者一人当たりの付加価値は、コンビニのほうが小さくならざるを得ません。
このような場合は、次のとおりに計算することをお勧めします。

$$個人商店:労働生産性 =\frac{1,800万円}{2人×1,500時間}×100=6,000円/時間$$

$$コンビニ:労働生産性 =\frac{10,000万円}{20人×1,000時間}×100=5,000円/時間$$

個人商店 コンビニ
営業利益 600万円 3,000万円
人件費 800万円 6,000万円
減価償却費 400万円 1,000万円
 付加価値 1,800万円 10,000万円
 労働者数 2人 20人
 一人当たり年間就業時間 1,500時間 1,000時間
 労働生産性 6,000円/時間 5,000円/時間

先ほどに比べて、労働生産性の差は小さくなりましたね。ということは、就業時間1時間当たりで考えれば、両者の労働生産性にそれほど大きな違いがあるわけではないといえます。

まとめ

国際的に見て、日本の生産性は相対的に低いと指摘されているようです。また、短時間勤務制度やテレワークの導入、長時間労働抑制の動きも進んでいます。このような観点から、労働生産性を管理することの意義はますます高まっていくでしょう。