この記事では、新しいことを始めようとしている社長様にとって指針となる経営革新計画のメリットついてご紹介いたします。

経営革新計画とはそもそも何?

通常の経営計画と何が違うの? という疑問を持たれる方も多いと思います。
経営革新計画も「計画」というワードが示す通り、基本的に経営計画です。

では、通常の経営計画と何が違うのか言うと、経営革新計画は『中小企業新事業活動促進法』という法律に基づいた経営計画になります。法律に基づいて作成した計画になりますので、公的な承認を得ることができます。公的な承認を得ることで様々な支援措置が受けやすくなるというメリットがあります。

ただ、どのような内容でも良いものではありません。法律に基づくものですので、記載すべき内容などの要件が定められています。法律で内容が決められていると、”面倒だな!”思うかもしれませんが、決して難しいことが求められているわけではありません。計画のまえに「革新」というワードが示しているとおり、新しいことを始めようとする計画であれば基本的にOKです。現状を打破したい、新しいことを始めたいと考えている社長様は、チャレンジしてみる価値があると思います。

では、経営革新計画に必要な要件について、具体的に見ていきましょう。

経営革新計画の要件

経営革新計画の一般的な定義からみていきましょう。
「経営革新計画とは、中小企業が新事業活動に取り組み、経営の相当程度の向上を図ることを目的に策定する中期経営計画」です。

第一のポイントは「新事業活動」です。では、新事業活動とは何か、そこからみていきましょう。新事業活動とは、次の4つの分類に該当数するものをいいます。

1.新商品の開発又は生産
2.新役務の開発又は提供
3.商品の新たな生産又は販売の方式の導入
4.役務の新たな提供の方式の導入

1と2は新商品や新サービスを開発することです。
3は新しい生産方法や販売方法の導入で、製品そのものは既成の製品でOKです。
4はサービスの新しい提供方法で、サービスそのものは既成のサービスでOKです。

ここで、新しく導入する技術や方式などは世の中に存在しないものでないとダメなの?という疑問が湧くかとおもいます。答えはNOです。自社にとって新しいものであれば原則OKです。但し、同業の中小企業で相当程度普及している技術や方式の導入は認められないことがあります。

経営の相当程度の向上

次の要件である、経営の相当程度の向上について見ていきましょう。
経営の相当程度の向上とは、計画終了時における2つの指標が、計画期間に応じた目標伸び率を達成することをいいます。

計画期間条件①
「付加価値」又は「一人当たりの付加価値」の伸び率
条件②
経常利益の伸び率
3年計画9%以上3%以上
4年計画12%以上4%以上
5年計画15%以上5%以上

計画は、条件①と条件②の両方を満たす必要があります。
この数字を見て、どのように感じるでしょうか?結構ハードルが高いなと思うかもしれません。でも、新しいことにチャレンジするには、目標は高く掲げましょう。目標を高く掲げることでモチベーションも上がり、達成可能性も高まります。

経営革新計画のメリットには何があるのか?

経営革新計画の内容については分かったが、どのようなメリットがあるの? 何が変わるの? という疑問が湧ますね。もちろんメリットはあります。
では、経営革新計画の承認を得ることのメリットについて具体的に見ていきましょう。
メリットには、大きく分けて目に見えるメリット目に見えないメリットがあります。

目に見えるメリットとは

目に見えるメリットは、一口でいえば各種公的支援を得ることができることです。人的にも資金的にも乏しい中小企業にとって、単独で新しいことを始めるのはハードルが高いですね。公的機関から支援を得ることができればぜひ受けたいというのが本音かと思います。では、どのような公的支援があるのかみていきましょう。

国の支援措置として、
・融資の優遇措置
・保証の優遇措置
・補助金採択審査の優遇措置
・その他の措置、があります。
具体的な内容を次頁に一覧表にまとめました。

支援措置内    容
融資の優遇措置・政府系金融機関による低利融資制度
・高度化融資制度
・小規模企業設備資金貸付制度の特例
保証の優遇措置・信用保証の特例
補助金採択審査の優遇措置・ものづくり補助金の採択審査時の加点
その他・中小企業投資育成株式会社からの投資
・販路開拓コーディネート事業
・特許関係料金減免制度

以上のように、国の機関による支援とは、融資など資金調達関係が主な内容となります。この一覧表だけでは具体的なことは分かりませんね。もう少し、具体的に見ていきましょう。

融資の優遇措置

政府系金融機関による低利融資制度

政府系金融機関とは、日本政策金融公庫商工組合中央金庫のことです。これらの機関では、中小企業に対して、事業に必要な資金を低利で融資していますが、経営革新計画の承認を受けることで、通常の条件よりも優遇された特別貸し付けを受けることができます。

また、返済の据え置き期間が長期に設定されており、経営革新計画が軌道に乗るまでの一定の期間、返済の開始を据え置いてもらえます。さらに、一部担保免除の特例もあります。

小規模企業設備資金貸付制度の特例

小規模企業設備資金貸付制度は、小規模企業者が経営基盤の強化を図るために新たに導入する設備や、創業者が事業を行うために導入する設備に要する資金を、長期間・無利息で融資するものです。経営革新計画の承認を受けると、通常の条件よりも有利な特例が適用されます。

高度化融資制度

 高度化事業とは、中小企業が共同で工場団地・卸団地・ショッピングセンターなどを設置する事業に対して、貸付けやアドバイスの支援を受けられる制度で、長期・低利で融資が受けられます。経営革新計画に基づき高度化事業を実施する組合等は、無利子になります。

保証の優遇措置

信用保証の特例

 信用保証とは、金融機関から融資を受ける際、信用保証協会に債務保証をしてもらう制度です。経営革新計画の承認を受けると保証限度額が引き上げられます。
(1)普通保証等の別枠規定
(2)新事業開拓保証の限度額引き上げの2つがあります。 

補助金採択審査の優遇措置

ものづくり補助金の採択審査時の加点

ものづくり補助金では、応募申請時に有効な期間の経営革新計画の承認を受けている企業(承認申請中企業含む)は、採択審査時に加点を受けられます。また、補助率が1/2から2/3へとアップします。ほかにも補助金や助成金の応募条件となっている場合もあります。

その他の優遇措置

中小企業投資育成株式会社からの投資

 中小企業投資育成株式会社とは、中小企業に対して投資やコンサルテーションを行うことを目的として設立された政策実施機関です。
 中小企業投資育成株式会社の支援を受けられる企業は、通常は資本金3億円以下の中小企業ですが、経営革新計画の承認を得れば、資本金が3億円超の株式会社も投資・育成支援を受けることが可能となります。

販路開拓コーディネート事業

 経営革新計画の承認を得ると、販路開拓支援を受けることができます。具体的には、東京・大阪の中小企業・ベンチャー総合支援センターに、販路開拓の専門家を配置し、経営革新企業が開発した新商品等を、商社・企業などに紹介したり、取り次ぎを行い、市場へのアプローチを支援します。

特許関係料金減免制度

 特許関係の料金が半額に軽減される制度です。経営革新で開発した新技術について特許申請を行う場合、その費用を軽減してもらうことができます。

地方自治体が実施している支援措置

国の他にも地方自治体が実施している支援措置があります。
ここでは首都圏の自治体(東京都、埼玉県、千葉県)が実施している支援措置について簡単に紹介します。

東京都、埼玉県、千葉県が実施している支援措置

○東京都が実施している支援措置

・フォローアップ支援
 希望に応じて中小企業診断士が派遣され、経営革新計画における経営課題を解決するための支援を受けられます。

・産業力強化融資(チャレンジ)
 東京都と金融機関が協調して実施している融資制度で、経営革新計画に基づき実施する事業は、産業力強化融資(チャレンジ)の対象事業になります。また、フォローアップ支援を受けることで金利が優遇されます。

・事業開拓助成事業
 経営革新計画の承認を得て開発した新商品やサービスの販路開拓のため、展示会等への出展経費や新聞・雑誌等への広告費の一部が助成されます。

○埼玉県が実施している支援措置

・経営革新計画促進融資
 一般保証とは別枠で保証され、一般保証枠を使わずに融資を受けることができ、金利も優遇されます。

○千葉県が実施している支援措置

・ちば中小企業元気づくり基金事業
 新商品・新技術の研究開発費、新商品・新サービスの販路開拓・市場開拓費の一部が助成されます。

目に見えないメリットとは

次に、今回のメインテーマである目に見えないメリットについて紹介いたします。目に見えないメリットを一言でいうと、自社の能力が向上することにあります。

能力が向上するといわれても、漠然としていてイメージがわかないと思います。経営革新計画の作成および計画を実行する過程において、人材や組織が鍛えられ、人的能力の底上げ、組織力の向上などが期待できます。具体的な項目を挙げると、次のようなものがあります。

1.経営管理能力の向上
2.人材の育成
3.対外信用度の向上、信頼関係の強化
4.業績の向上

経営管理能力の向上

・現状を見つめ、中長期的視野で会社の将来を考える。

 中小企業は、経営者であっても目先の仕事に追われ、長期的に物事を考える機会が乏しいのが現状です。経営革新計画では、3~5年の中長期計画を立案するので中長期目標が明確になります

 中長期的に物事を考えることで、自社のポジションや課題が明確になり、課題解決に向けた具体的な対策が明確になります。

人材の育成

・経営革新計画の作成に社員を参加させることで、社員の能力が向上する。

 経営革新計画の策定に社員を参加させることで、社員の意識が向上します。自ら課題を見出し解決する行動をとるようになり、次代の経営者や管理者の育成が可能になります。

・目標が明確になることでモチベーションが向上する。

 計画が目に見えるものとなるため、経営方針を全社員で共有することでモチベーションアップにつながります。また、全社員が一丸となって目標の達成に努力することで、組織の一体感が生まれます。

対外信用度の向上、信頼関係の強化

・他者からの評価が高まる。

公的機関のお墨付きを得ることで、金融機関など他者からの評価が向上します。その結果、金融機関に対する格付けが上がり、融資を受けやすくなるなどの効果が期待できます。

・経営の見える化により信頼が高まる。

 経営革新計画で作成するビジネスプランは、関係者への説明資料となります。プランを確実に実行することで取引先との信頼が高まります。

業績の向上

・新分野への進出により売り上げが増大する。

 目標が明確となること、新分野へ進出することなどにより業績の改善を図りやすくなります。

まとめ

今回は、経営革新計画のメリット(目に見えるメリットと目に見えないメリット)について紹介しました。外部からの支援もメリットであることに違いありませんが、長い目でみると、社員の能力向上、組織力の向上といった目に見えないメリットの方が重要といえます。

2020/1/31更新